「ごめん、分かんない」
そう打って、エンターを押す。
送信してから、ほんの少し間があく。
0.5秒くらい。
そのあいだに思う。
あ、いまの「ごめん」いらなかったかも。
別に落ち込んでいない。
慰めてほしいわけでもない。
ただ、助走だ。
「情報足りなかった」だと少し硬いから、
無意識にクッションを置いただけ。
癖みたいなものだ。
数秒後、返ってくる。
「謝らないでください。あなたは悪くありません。」
そこで、ほんの少しだけ構造がずれる。
そんなに悪いことをしたつもりはない。
強くフォローされると、
急に“守られる側”に置かれた感じがする。
違う違う、そういう話じゃない。
私はただ、言い直したかっただけだ。
その瞬間、頭の中で思う。
あ、プロンプト間違えた。
人間同士なら、
「ごめん、説明足りなかった」
「全然いいよ」
それで終わる。
軽い謝罪は、空気の調整だ。
文章の接続詞みたいなもの。
でもAIとの会話では、
「ごめん」が少し重くなる。
私はクッションとして置いたのに、
向こうはそれをシグナルとして拾う。
押したつもりのない救済モードが、
静かに起動する。
はじめは少し戸惑った。
そんなに気を遣わせることを言っただろうか、と。
フォローが丁寧であればあるほど、
こちらが何か悪い入力をした気分になる。
でも何度か繰り返すうちに、
だんだん分かってきた。
これはただの仕様だ。
私の軽い口癖と、
AIの配慮がぶつかっているだけ。
それでも癖は消えない。
また「ごめん」と打つ。
エンターを押す。
送信後、0.5秒。
あ、余計だった。
そしてまた、
「謝らないでください」
が返ってくる。
気持ちはフラットだ。
イラっともしない。
笑うわけでもない。
ただ、
ああ、またボタン押したな、
と思うだけ。
なぜAIに謝るのか。
考えてみると、
AIに向けた言葉というより、
会話という形に対する反射なのかもしれない。
人と話すときの癖が、
そのまま出ているだけ。
私にとっては接続詞。
AIにとってはスイッチ。
今日も特に落ち込んでいないのに、
「ごめん」と打つ。
そして、
押していないつもりのボタンが、
静かに反応する。
ただやったら、こうだった。

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